OWWHフレームワークを使ってコミュニティを考え直すと色々と「見えてくる」話
この記事は クラスメソッドグループのコミュニティ活動 Advent Calendar 2024 - Adventar 24日目の記事です。
今回のアドベントカレンダー企画、1日目、15日目に続き3度目の登板となります。24日目のエントリはコミュニティのことを考えるにあたってとても便利なフレームワークがあるということをご紹介したいと思います。
それがタイトルでも言及している「OWWH」というフレームワークです。
OWWHって何?
OWWH(OWWHフレームワーク)は、日本におけるコミュニティマーケティングの第一人者、小島英揮さんによって提唱された、コミュニティマーケティングを効果的に設計・運営するための重要なツール・手法です。
OWWHという名称は下記4つの要素の頭文字から構成されています。対象となるコミュニティの目的や勝利条件(Objective)を定めた上で、それらを実現するにはどのようなユーザー(Who)に集まって欲しいのか、また集まってくれたユーザーにどういった価値(What)を、どのような形(How)で提供していくのか...という流れで物事を整理していきます。
- O :Objective (目的・勝利条件)
- W :Who (対象)
- W :What (提供する価値)
- H :How (実行方法)
自分の言葉で「こういうものだよ」と説明してみましたが、小島さんの個人ブログにOWWHを端的に説明する文言か書かれていたので引用させて頂きます。
ビジネスのレイヤー構造を整理するOWWHモデル
コミュニティマーケティングに限らず、企業でビジネスに寄与、関与するコトを起こす場合、ほとんどは下記のチャート図で説明がつくはずです。私はコレをOWWH(=Objective→Who/What/How)モデルと呼んでいて、パラレルマーケティング先のチームなどでも、このチャートを使ってビジネスのゴール、勝利条件(Objective)と、顧客設定(Who)や訴求メッセージ(What)、マーケティングをはじめとする各種施策(How)の紐づけや解像度があっているかをチェックしています。
その他、小島さんの提唱するコミュニティマーケティングでは 「コミュニティ成長のための3つのファースト(コンテキスト、トラスト、アウトプット)」、「Sell Through The Community(コミュニティを通じて売る)」「第一想起」 といった、コミュニティ及びコミュニティマーケティングを考えていく上で分かりやすく、それでいて洗練されたモノや施策の考え方を進めていくことが出来るものになっています。
その他OWWHを含めたコミュニティマーケティングの説明、解説については 小島さんのスライド資料(Speakerdeck) 配下に盛り沢山な資料がありますので御一読頂けますと幸いです。(※エントリ公開日時点で直近公開された資料を埋め込みで表示しておきます)
OWWHに沿ってコミュニティを考えたら色々見えてくるものがあった
ここで一旦、私とOWWH(そして小島さん)との関わりというか、私がOWWHと向き合うことになった流れを述べさせて頂きます。
小島さんはFlexUG時代から弊社代表取締役:横田聡と強い繋がりがあり、AWS日本法人第1号となってからはクラスメソッドとしても引き続き「AWSの小島さん」として関わりを持つ形となっていました。
ここまでは一方通行的に「私が小島さんという方を認識している」だけでしたが、一度小島さんがとあるイベントでクラスメソッドを「ブログの会社」として紹介頂いた際、その端的な状況を表すものとして「私が当時執筆していたブログの本数状況」を例に挙げてくださっていました。当時私はその模様を最前列で観ていたのでイベント終了後「実はあれ私のなんです」って挨拶をさせて頂いたのは今も覚えています(笑)
そして時は流れて2024年。
クラスメソッド20周年イベントの一環で開催した「DevelopersIO 2024 TOKYO」にて、これもまた小島さん(及び横田)と強い関わりのあった伊藤かつらさん(現在は人事院人事官)と共にそれぞれ登壇頂きました。
その時のレポートは以下にまとめています。
そしてこの時、小島さんがコミュニティマーケティングの文脈でクラスメソッドの今後についてお話し頂き、「コミュニティマーケティングというものがあるのか」「その中にはOWWHフレームワークという考え方もあるのか」とその存在を知った次第です。
ちょうど自分自身もコミュニティ及びコミュニティ支援に関わるようになり、強い興味と関心を持つようになりました。
小島さんの書籍も読み、
ちょうど開催・開講されていた個人向けセミナーも受講しました。
という流れ・経緯を経て今に至ります。
OWWHが良いな、と思ったところ
コミュニティそのものの在り方やビジョンをより明確に、洗練させて考えることが出来る
「OWWHのいいところ」として見出し的に3〜4つくらい挙げてみようかな...と思って文章構成を考えてみましたが、突き詰めるとこれになるかなと。
コミュニティのOWWHを考える際に合わせて「そのコミュニティはそもそもどういうもので、何を扱っていて、どういう特徴や特性があり、どういうところを目指しているのか」といった部分についても考えるようになると思います。コミュニティにおける概要説明文だったり、アジャイル開発におけるインセプションデッキの文脈などで用いられる「エレベーターピッチ」(通常 60 秒以内(エレベーターに乗るまでの時間)で、それについて何も知らない人に、「何を、なぜ、どのように」を、的確で簡単に説明すること)のような位置付け的テキストといえば良いでしょうか。
OWWHを活用して物事を分解して考えていくことで、それぞれの要素間の結びつきや関係性が色々見えてくると共に、Objective - Who - What - Howそれぞれの内容も要素間を言ったり来たりしながら、あーだこーだ悩んだりディスカッションながらより洗練させて、ブラッシュアップさせて行くことが実感出来ました。結果コミュニティの在り方や方向性などもより明確化、差別化を図っていくことに繋がっていってるな...と思った次第です。(実際のところはそんなに綺麗にスパッとまとまったかというとそんなことは無く、考えることが多く大きくなってきた感もありますが、何らかの変化を起こせている、前より良くなっているという実感は確かなものがあると感じています)
個別に施策・作戦を考えていくことが出来る(整理出来る)
OWWHフレームワークでは、O(Objective)に対するWWH(Who-What-How)は複数個展開出来る想定の考え方になっています。「コミュニティのObejctiveを考えたら、Aっていうユーザー層とBっていうユーザー層とCっていうユーザー層の人達に集まって/参加して欲しいな」みたいな感じです。
この点に対して、OWWHのフレームワークに則って考えていくことで「ユーザー層A」「ユーザー層B」「ユーザー層C」それぞれに適した価値提供とその方法を分けて検討することが可能となります。それぞのユーザー層は(コミュニティが求める結果にも依りますが)特性や特徴は異なるでしょうから、このアプローチの仕方は理に適っていると言えると思います。
コミュニティの枠を超えて物事を突き詰めて考えることが出来る
これも1つめの「洗練」に近いイメージかも知れませんが、Objective-Who-What-Howの関連性を考えていくことで、要素間に距離感や矛盾を感じる部分を見つけ、コミュニティの枠を超える形で「これってそもそもこうなんじゃないか」という情報・状況整理が出来るな、と思いました。
「人の集まり」を設計、考えるツールとしても使える(と思う)
OWWHフレームワークはその出自から「 コミュニティ マーケティング 」、即ちビジネス的側面が非常に強いツールであると思います。
仕事に於いて何らかのツールやサービスを「より多くの人々に知ってもらい、使ってもらい、買ってもらい、ユーザーを増やす」のが命題となり、企業やサービス提供側はそのための活動を行う、そこにコミュニティが絡んで来る。そこを如何に上手くやっていくか。戦略や展開を考えていく時にOWWH(及びコミュニティマーケティングの考え方)はとても強い効果を発揮すると思いますが、OWWHフレームワーク自体の考え方はなにもビジネスが絡んでいなくても「人の集まり」(これも"コミュニティ"ですね)を設計する時に有用な考え方、ツールとして利用出来るな、と思いました。
OWWHフレームワークを通じてその「集まり」が何を目的目標(Objective)とするのか、そこからどういったWWHがあると良いのか。結果としてその「集まり」の存在意義やビジョンが明確になり、関わる人々のモチベーションや参加する意味・意義的なものをわかりやすくする働きがあるんじゃないかなと思います。
ってことで、是非みんなもOWWHを使ってコミュニティを、またコミュニティや勉強会イベントを設計してみると良いと思います。オススメです!
まとめ
という訳で『クラスメソッドグループのコミュニティ活動 Advent Calendar 2024』24日目のエントリをしんやがお届けしました。
明日12/25(水)、アドベントカレンダー最終日(?)は take3000 さんの予定です。お楽しみに!